ヨーガスートラ 3章23節~3章34節





मैत्री आदिषु बलानि 3-23

マェトリー アーディシュ バラーニ




मैत्री マェトリー

आदिषु アーディシュ
~などにサンヤマすることによって
(慈のほか、悲・喜・捨などの四無量心)
(参照1章33節)

बलानी バラーニ
力を得る。


ある日本語訳では「慈・悲・喜・捨」のうち「捨だけは消極的で無内容な情操であって、実行力を必要としないから、力の発揮とは関係がない」と説明が添えられていますが、そのように思っていません。

「捨」は情操そのものでなく、執着などの情操を捨てる意志であり、「捨」という力は、少なくとも「消極的で無内容な情操」ではなく、一番自分が目を背けたい、心の弱い部分と向き合う力が必要になり、それと引き換えに、とらわれた心が解放されると力が発揮されます。



बलेषु हस्तिबलादीनी 3-24
バレーシュ ハスティバラーディーニー



बलेषु バレーシュ
(様々な)力の中に(サンヤマすることによっても)

हस्तिबलादीनी ハスティバラーディーニー
象などのように強力な力を得る。

हस्ति ハスティ 象のような
बल バラ 巨大な力
आदीनि アーディーニ  ~などのように


古代インドの王族や宝石商人は移動手段として象を利用していました。道中、トラや盗賊に襲われる話は、今でも珍しいことではないようです。外敵から身を守るための一番頼もしいとされた乗り物が象でした。

 

私が住む家の大家さんの10代の娘さんがデリーの重量挙げ選手権で優勝した人で、170㎏ぐらいの物も両手で頭の上に持ち上げるぐらい怪力なのです。乗用車も素手でロープで引っ張って引き寄せるほどなのです。


ベジタリアンのか細いイメージが崩壊するほど強い女性で、どういうマインドコントロールをしているのか聞いたことがありました。そのうちのひとつに、「自分の中に象の力が入っている」と思い込むそうです。なりたいイメージを鮮明に描いて実現する例ですね。


そんな無敵に見える象にも天敵がいます。「アリのひと噛み、巨象を倒す」というように、人間でもアリに噛まれると長らく赤く炎症しますが、致死にいたるほどの猛毒をもったアリもいて、免疫のない象だと死んでしまうこともあります。


アリの体内で作られた物質なのか、象にとっての致命的な毒物を自然界から採取して注入したのかわからないところもあるのですが、アリ社会の知恵も奥が深いですね。




प्रवृत्त्यालोकन्यासात् सूक्ष्मव्यवहितविप्रकृष्टज्ञानम् 3-25


プラヴリッテャーローカニャーサート スークシュマ ヴィャヴァヒタ ヴィプラクリシュタ ジュニャーナム




प्रवृत्त्यालोकन्यासात् プラヴリッテャーローカニャーサート
輝く光明にサンヤマをすることによって

सूक्ष्म スークシュマ
超極小、不可視なもの、微細な存在

व्यवहित  ヴィャヴァヒタ(vyavahita)
隠されているもの
(例:海の中に沈んだ宝玉、鉱山に潜む貴石や金など)

विप्रकृष्ट ヴィプラクリシュタ

はるか遠くにあるもの

ज्ञानम् ジュニャーナム
(これらが、どこにあるのか)知ることができる。




भुवज्ञानं सूर्येसंयमात् 3-26

ブヴァナジュニャーナン スールイェーサンヤマート



सूर्ये-संयमात् スールイェーサンヤマート
太陽にサンヤマすることによって

भवन -ज्ञानम् ブヴァナジュニャーナン
すべての「界」を知る力を得る。


プラーナ文献の解説にはこの世界には14の界層があり、そのうちの一つに私たちの住む地上界・人間界があります。初期のヨーガスートラの翻訳をしたヴィヤーサはこれについて詳細に記述をしています。



चन्द्रे तारव्यूहज्ञानम्  3-27
チャンドレー ターラヴューハジュニャーナム



चन्द्रे チャンドレ
月に対してサンヤマすることによって

तारा-व्यूह-ज्ञानम् ターラヴューハジュニャーナム
星の集合体について知るようになる。



ध्रुवे तद्गतिज्ञानम्  3-28
ドゥルヴェー タドガティジュニャーナム




ध्रुवे ドゥルヴェー
北極星にサンヤマすることによって

तद्-गति -ज्ञानम् タドガティジュニャーナム
その星々の動きのリズムを知るようになる。



नाभिचक्रे कायव्यूहज्ञानम्  3-29
ナービチャクレー カーヤビューハ ジュニャーナム



नाभि -चक्रे ナービチャクレー
マニプラチャクラにサンヤマすることによって

काय -व्यूह -ज्ञानम् カーヤビューハ ジュニャーナム
身体の全体構造について、完全な知を得るようになる。



कन्ठकूपे क्षुत्पिपासा निवृत्तिः 3-30
カンタクーペ クシュトピパーサー ニヴリティヒ



कण्ठ-कूपे カンタクーペ
喉の部分にサンヤマをすることによって(ちょうど喉の奥の舌の付け根あたりにある空洞といわれているところ)

क्षुत्पिपासा (क्षत्-पिपासा ) निवृत्ति : 
 クシュトピパーサー ニヴリティヒ
空腹と喉の渇きから解放される。
 超俗的になる。)





कूर्मनाड्यां स्थैर्यम् 3-31
クールマナーディヤーン スタェルヤム



कूर्मनाड्याम् クールマナーディヤーン
(クールマ・ナーディとは330節で述べられた舌の付け根あたりから、より下に降りた部分で、胸部あたりにある気道のひとつで、亀の形をした気道があります。ナーディヤーンは複数形。)
 
स्थैर्यम् スタェルヤム
(そこにサンヤマをすることによって)不動・安定性を確立する。




मूर्धज्योतिषि सिद्धदर्शनम् 3-32


ムールダジョーティシ シッダダルシャナム



मूर्ध-ज्योतिषि ムールダジョーティシ 

頭蓋骨の上にある窪みで、ブラフマランドラとよばれるところ。宇宙からのエネルギーが降り注がれるところでもあり、世を去るときにそこから魂が抜け出ることが好ましいとされる。ここにサンヤマすることによって、以下。

सिद्ध -दर्शनम् シッダダルシャナム
地上界や天上界にいるシッディを得た仙人、また(完全ではないけれども)神格を持つ徳の高い者に出会う。




प्रातिभाद्वा सर्वम् 3-33
プラーティバードヴァーラー サルヴァム



प्रातिभाद्वारा プラーティバードヴァーラー
直観智/照明智が芽生えることにより

सर्वम् サルヴァム
(今までに述べた)すべての智慧が(ヨーギーに)おとずれる。

*「प्रातिभ ज्ञान」 プラーティバ ジュニャーナ 
直観智/照明智とは、グルや聖典がなくても、サンヤマをしなくても、自らの智慧の光で分かるレベルに達した知識。識別智(ヴィヴェーカ ジュニャーナविवेक ज्ञान)に起因する前段階の智慧をいいます。



हृदये चित्तसंवित्   3-34
フリダイェ チッタ サンヴィト



हृदये フリダイェ
心臓にサンヤマすることによって、

चित्तसंवित् チッタ サンヴィト

チッタの本質を知る。

チッタの住処・活動域である心臓のことを、ヒンディ語で「ブラフマの住む家」という意味をもつ「ブラフマプルब्रह्मपुरとも呼びます。